2011.10/18.

上海 和平飯店 by ts

上海の外灘(バンド)にある、和平飯店。上海一の高級ホテルとしてその名を馳せていましたが、しばらくの間、改装の為に閉鎖していました。去年の9月に経営も国営からFairmont hotel グループに代わり、全面改装され再びオープンしました。もともと、このホテルは当時の上海の経済を牛耳っていた英国の大富豪サッスーン一族の本拠として1926年に建築が始まり、1928年に完成しました。10階建てで、一部12階建ての建物で、外壁は幾何学模様のアールデコ様式で飾られています。ピラミッド型の緑色の尖り屋根がバンドエリアのランドマークのようになっています。サンスーン一族がここを建てた当時、5階から上は自らが経営するキャセイホテルが入っていました。東洋のパリと呼ばれた上海を代表する名門ホテルとして1949年の中国共産党による上海独占まで営業を続けますが、その後は和平飯店に売却され、国営ホテルとして営業していくことになります。

その1920年代、ヨーロッパで一世風靡していたルネ・ラリックのガラス作品を装飾として使ったホテルとしても、非常に有名なホテルでした。しかし、最近まで は中国に行くのもvisaなどの煩わしさもあり、さらに長い間、閉鎖していたので、それがどんなものなのか、僕にとってもすごく謎でした。閉鎖する前に泊まったことがある人に聞いても、今ひとつ確かな答えを得ることができなかったのですが、この再開を機 に、訪ねてみることにしました。

 

まずはホテルのエントランスから。

これがオリジナルのデザインを復興したものかどうかは全く解りませんが、豪華ではありますがあまり、アールデコスタイルとは言えないとおもいます。いったいラリックはどこのあるのやら??恐らく、8階にあるレストランやバンケットルームなのではと想像してエレベーターで上にあがってみました。

 

そして、ついに見つけました。バンケットルームのブラケットとして、1926年にデザインされたRINCEAUXが使われています。

しかし!!そのブラケットの上のつばめのパネルを見て唖然としました。確かにラリックのデザインなのですが、ガラスの質が全く当時のものではないのです。緑がかったガラスは明らかに現代に作られたものです。恐らく当時の物は破損してしまい、それのコピーを制作したのでしょうね。ちょっとがっかりです。元来、この二つのデザインの組み合わせはラリックのオリジナルの物ではないので、当時のこのホテルのインテリアデザイナーが考えたものかもしれないし、あるいは改装に会わせて今回新たに作られた物なのかは不明です。この二つのコンビネーションのブラケットはこのバンケットルームに多数取り付けられてはいましたが、多くのつばめのパネルはコピーされたものでしたし、RINCEAUX自体も明らかにコピーされた粗悪なものまでありました。ますます、がっかりが続きます。

 

他にはないものかと部屋の中を見回しました。また、みつかりました。これは柱に取り付けられたやはり、ブラケットです。

このブラケットは1927年にデザインされたGRAINE(木の実)というタイトルの物です。ただ、その下に取り付けられた渦巻き模様の金色の装飾品はラリックのデザインではありません。これも当時からあったものなのか、あるいは改装に際して追加されたものなのかは不明です。 まあ、このコンビネーションは悪くないですね。ひょっとして当時のものかもしれません。

あとは、この部屋の中には見当たりませんでした。でも、もっとあるかもしれないと思い、バンケットルームを抜け、同じフロアにある中華レストランに抜ける通路ですごいものを見つけてしまいました!!

見て下さい!!

なんと美しい回廊でしょう。先ほどのつばめのパネルを使ったブラケットがオリジナルの形で何灯も続いています。縦長にカットされたジグザグの鏡もおそらくオリジナルデザインだと思われます。思わずうっとりしてしまいました。鳥肌が立つくらいに興奮して何度もカメラのシャッターを切りました。

このプラケットは1925年のデザインで HIRONDELLES (つばめ)という作品名。飛び交うツバメのパネルもパネルの下の半月型のプラケットも全てオリジナルのままです。ガラスの質感もルネ・ラリックの作品そのものです。しかも、この回廊のすべてのもの(全部で6灯ありました)が完璧な状態で残っていました。

僕が何枚も写真を撮るものだから、ホテルの従業員達が僕の前をいったい何事かと顔を見ながら通り過ぎて行きました。それで、従業員達に他にもラリックの作品はどこにあるのかと聞き回ったのですが、そもそもラリックの名前すら誰も知らないのだから、どうしようもありませんでした。

ようやく、2階のホテルギャラリーを見つけて、そこの担当者と話をしたのですが、この8階の回廊のことは全然知らない様子でした。改装前に9階にあるサッスーンルームのドアにラリックのパネル装飾があったそうですが、今は取り外されているそうです。見られなくて残念でした。なんでも、ホテルではそれは非常に貴重な物で、その二枚のパネルだけで、ホテルの半分の価値があるとか言ってました。そんな訳ないですよね!!もし、そうなら僕は和平飯店を何棟も買えることになってしまいますよね!!8階の回廊のブラケットの方が数倍値打ちがあるのにって、それを知らないんだって心の中でつぶやきました。そのドアパネルの写真がweb上で見つかったのでここに添付しておきます。

これは、1920年にデザインされたMARTIGUESという本来は装飾用の大皿です。直径は36cmあります。この部屋の入り口は左右に扉のある観音開きになっていて両扉にこの皿がはめ込まれていたようです。なぜ、改装にあたりこれは取り外されたのかは解らないとギャラリーの人も言ってました。

以上が僕が和平飯店でみつけられたラリックの作品でした。ここのホテルのスィートルームは世界各国のテイストでいろいろにデザインされていたようです。今もその部屋が残されているのかは不明ですが、一度は泊まってみたいです。どこかの隠れたところでラリックが見つかるかもしれないですね。  ts

 

 

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